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t r a v e l   p h o t o g r a p h y
絶壁に建つ砦 - ペイルペルテューズ


キュキュニャン(Cucugnan)と言う面白い名前の小さな小さな村。
欧州最大の城壁都市カルカソンヌ滞在翌日のステイ先をそこに決めた理由は、ネットに載っている星の数ほどありそうなホテルリストからレストランが良さそうなロッジを見つけたのだが、その場所がこの村だったというのがひとつ。そしてキュキュニャンの村からさほど遠くない場所に、急峻な崖の頂上に築かれた変わった要塞(ペイルペルテューズ)がありそこからの眺望がお目当てというのがふたつ目の理由。たいてい宿は現地でお気に入りを探すのだけど、宿が少ない閑散期のフランスの片田舎のこと。あらかじめ日本でネットから予約しておいたのだった。(今回は宿泊は全て日本で予約を済ませた。ここの宿のレストランに置いてあった Logis の分厚い本をもらって帰ってきたから次回はこれで安心♪ガイドブックのシンプルなホテルリストもオサラバだ)



なかなか回復しない曇り空を見上げつつ幾つかの緩やかで小さな峠を越える。
すれちがうのはトラクターとかロードバイクに乗った熟年のサイクリストくらい。歳を取ってこの峠でサイクリングを?なんともうらやましい限りだ。勾配が緩いフランスの地形とあいまって、山道でも視界をさえぎられない見通しの良い道が多いフランスはやっぱりサイクリスト天国!! 「ええなぁ~!」「めっちゃ気持ち良さそうっ!」 ハンドルを握り締めながら何度そうつぶやいたことか。雲間から強い一条の陽が差せば丘陵の一面の緑やシラカバの白い幹が一瞬にしてまばゆく輝いてため息が出てくる。湿気を含んだみずみずしい南フランスの里山風景を愉しみながらゆっくりと南へ下りキュキュニャンへと向かった。



幹線道路を避けて山道ばかり走っているとほとんどクルマや人に出会わないのと大きな谷の向こうの雄大な山の連なりがふと、合衆国の北西部、ワシントンやモンタナあたりを走っているような錯覚すら感じるのだった。フランスもユーラシアの一部、島国とは異なり大陸的なところがある。こんな風景に対する憧憬が強いのは島国で育ったからだろうか。昔、知人がフランスの友人を連れて信州やら群馬をツーリングしたときに、日本の山道に凄く感動したんだって。。。そしてそれを聞いたときに 「こんなありふれた道がねぇ~?」 と思ったことを思い出した。欧米人にしてみれば森林に覆われた延々と続く日本のくねくね道もまた逆の意味で "Great!" だったりするのだ。



要塞へのトレッキングを日暮れどきに合わせたかったので、ひとまずキュキュニャンのロッジにチェックイン。このかわいらしい名前の集落は少し高台の斜面にあるので通りのどこからでも正面の山々の見晴らしがとてもいい。歩いても半時間もかからず見て回れるほどの小さな村だ。フィガロやクレアに紹介されてるメルヘン度満開南フランス村♪とまでは言わないが落ち着いた静けさがとても気に入ったのだった。




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頃合いを見て、サイフとカメラだけ持ち出してクルマに乗りイグニッションを回す。
ロッジから丘陵のつづらおれ道を十数分も走れば正面に急峻な岩肌がぐぐっと近づいてくる。絶壁のふもとに朽ち果てた改札口があった。昔はここが入り口だったのかな??途中、一軒のログハウスを過ぎる。キャラバン(=キャンピングトレーラー)が数台停まっていたからキャンプサイトだろうか。寄ってみても良かったか。。。先を急ごう。さらにつづらおれの道を駆け上がるとようやく未舗装の小さなパーキングスペースとビジターセンターが。クルマは1台も停まっていない。「うあぁ~ここも貸切かな?」
改札は18時半までであと半時間ほど。。。間に合った~
(下山したときもゲートは開いていたのでいつでも入れたのだった)


受付小屋にはこの地方の自然や歴史について書かれた本や写真集、絵はがきが置かれ、オリーブ色の制服を着たレンジャー風ガイド風のきりっと美人な若い女の人が独り居た。ちゃんと管理されている国立(?)公園。。。という印象を受けた。
(受付からしてあまりに胡散臭いとあっさり引き返すこともしばしば。どうでもいいところで慎重だったりする。個人旅行でツアーでもなくガイドもおらず他に人も居なかったりすると見極めるのは自分しか居ないから取り越し苦労でもこれはしょうがない。(笑))
改札でチケットを買う。
「ジャポン?」
と訊かれた。貰ったレシートには

Château de Peyrepertuse
ww.chateau.peyrepertuse.com
Date: 05/05/2010 Heure: 18:05
--------------------------------------------
2 Japon 0.00
2 Billets adults 10.00
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と。国が印刷されてるなんて珍しい!
URLのwが1コ抜けてるのはご愛嬌。。。
さて、行こうか♪

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尾根にある要塞への道にはところどころ雪が少し残っていた。
本当に季節はずれの積雪である。尾根に近づくにつれて勾配が急になり、ところどころクサリ場がある岩場を登る。不安定な足元に注意を払いながら歩く。足を止めて顔を上げれば遮るものがなく、ばーーん!と丘陵風景が広がっていた。背後には城壁がずずずっと尾根伝いに続いていてどこまで歩けば良いのやら??
先を見ると、ずっと上の城壁に子供の姿がちらり、ちらり。。。
フランス人ファミリーが上から降りてきたよ。
なんとなく安心感。。。
すれ違う人たちが家族連れだったら「あ~もぅ楽勝やな!」と思うしフル装備のトレッカーだったりすると「ひょっとしてとてもハードな道???」と気合が入ってしまう程ころっとモチベーションが上下する自分の気持ちに笑ってしまう。
(画像全て拡大可)


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砦のてっぺんにたどり着くと寒く強い風が吹いていた。
朽ちた石壁が残っているだけで吹きっさらし。空はまだまだ厚い雲に覆われていて日暮れを待っても焼けそうにない空だった。しかし飛び込でくる風景は絶景。冷たい風に煽られながら長年にわたって凄まじい戦いが繰り広げられていた中世の時代にしばらく思いを馳せる。こんな場所に石を運び、組み上げたのだから恐れ入る。信仰を守るために命がけでここに篭城したそうだが城壁内は狭く耕作も不可能に見える。とても長期生活なんて出来る環境になかっただろう。暗くなるまでここに居たい気がしてきたが嫁さんは寒いのとゲートが閉まってしまわないか不安で仕方ないらしい。。。
「それって締め出し逆バージョンやん?」
「お客さんが上から帰ってこないのに閉めるはずはないやろ~」
と言いつつ、万が一締め出されたら弁明のしようが無いので後ろ髪を引かれる思いで砦をあとにしたのだった。



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使われなくなったチケット売り場と要塞のある切り立った岩壁の尾根

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やや右のサンルームのようなバルコニーがあるのが泊まったロッジ


View Le château de Peyrepertuse in a large map





カトリック教会聖職者の堕落に対する反勢力が起源と言われるカタリ派はカルカソンヌからピレネー山脈までのラングドックルーション地方が地盤でこの一帯はカタリ派の里(Pays Cathare)と呼ばれた。同じキリスト教でもあるローマ教皇が派兵したアルビジョワ十字軍による大虐殺によってカタリ派は殲滅させられた。

Tuez-les tous, Dieu reconnaîtra les siens
「すべてを殺せ。神は己の者を知りたまう」

虐殺のとき、カトリック信者かカタリ派信者か見分け方を問われたローマ教皇特使はそう叫んだそうである。人里離れた地の岩山に立つ難攻不落であった要塞にその悲劇性を重ね合わせれば歴史マニアでなくともグッと来てしまうのだった。





2010.5.5 Peyrepertuse, Languedoc-Roussillon, France

Duilhac-sous-Peyrepertuse





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by travelster | 2010-06-18 23:18 |  └France | Comments(16)
Commented by horaice at 2010-06-19 00:30
迫力ありますねぇ。
まるで動画を見ているような気分になるのが不思議です。
どんどん入り込んでいきたくなります。
道路、車を運転しない人には分からない視点があるんですね。
添乗員をしていた時、ドライバーさんの目には確かに違う世界が広がってるなと思ったのを思い出しました。
それぞれの旅の思い出が、体の感覚としても残っていそうですね、
Commented by pond365 at 2010-06-19 00:34
はぁ~ ここもいいところですねぇ
こっちの南仏も行っておけばよかったかな(^^
Commented by travelster at 2010-06-19 23:34
★horaiceさん
広角は臨場感ありますね。だから好きなのかも。。。
で、道撮るのも好きなんです。
道ばっかりの写真集も持ってます。(^^
電車でもバスでも飛行機でも窓眺めてるのは全然飽きないんです。子供並みです。
風景フェチかもしれません。(笑
Commented by travelster at 2010-06-19 23:37
★pondさん
南フランスはみどころ多いですね。ホントに。
ダイナミックな風景がまだまだありそうです。
フランスは3泊しか出来なかったのでもう少し滞在したかった。。。
例の会は参加ですか?
Commented by pond365 at 2010-06-20 21:13
参加しますよ(^^
Commented by travelster at 2010-06-20 22:35
★pondさん
らじゃー♪
ボクは晩からになると思います。
またハッセル触らせてもらいます。^^
Commented by yumiko-shiba at 2010-06-20 22:47
ダイナミックな表現力で・・・なんだかでっかいスクリーンで見ている錯覚に陥りました

すっごいです こんな世界みたことない・・・

つくずく 私って狭い世界で生きてるんだなあって・・・(^^;
Commented by selfish555 at 2010-06-21 12:39
hahaha~

「〇~ジィ~寒い~」なんて言われたらアウトですな(笑)

ウチも寒い寒い良く言われます。冬は暖房の温度上げろ、夏は冷房の温度上げろ。

あ~早く「国外」に行きてェ~!

Commented by jack at 2010-06-22 07:49 x
参りました!!の一言です。

前の道の写真
見知らぬ国の地方道路
バイクで 日本ならよくやりますが、

また 今回の写真
以前のベトナム・インドネシアとまるで
風景が一変

先週末
ニセコへ・・・ラフティングを
カナダ人案内人のアンディいわく
スキー 大陸の山より 日本の山よりベター(小さくコースに変化がある)
パウダースノーは 何処よりもベター

スカンジナビアからお客が多いそうです。

日本から見た大陸
大陸から見た日本・・・・面白いですね。
Commented by travelster at 2010-06-22 12:40
★yumikoさん
そぅ~なんです、こんなのを見るとホント自分の世界観なんて狭いなぁ~とつくづく思ってしまいます。
だから余計にそんな世界に触れたくて出かけているような気がします。
Commented by travelster at 2010-06-22 12:51
★かっちゃん
そぅ、ほんとその通り。(笑
そんな彼女はイエローナイフにオーロラ観にいきたい♪と良く言います。(笑
Commented by travelster at 2010-06-22 13:05
★jackさん
田舎道、アジアとは全然違いますね。
面白さで言うと民俗的な変化が楽しめるアジアかな。。。

カナダのスキー場よりニセコの方が断然雪質は良いと思います。
3月の整地したゲレンデでも滑るとヒザから下が見えません。。
スキーだけするならカナダより北海道でしょうね♪♪

ラフティングといえば最近オージーが目を付けた群馬のミナカミが有名ですね。
Commented by 川越 at 2010-07-08 13:17 x
イタリアやフランスでは高速を走っていても、小高い岩山の上に教会や古城があって「行ってみたいものだ」って思いがいつもありました。それと同時に「どうやって上がるんだろう?」という気持ちでいたのですが、これを読んで少し気が晴れました。(^^)いつか行ってみたいです。
Commented by travelster at 2010-07-08 20:58
★川越さま
初めて欧州(イタリア)を訪れた時、同じように感じました。日本にはない光景ですし新鮮でした。
イースターと夏のバカンスの狭間の5月は閑散期なのでペイルペルテューズは人が少なかったのですが
シーズンになるとツアーもあって観光スポットになってるみたいです。
なかには立ち入り禁止の古城もあるんでしょうね。
Commented by 川越 at 2010-07-09 00:32 x
こんばんわ。早々に訪問して頂きありがとうございました。私のはいいかげんな写真ばかりで、人様に見せて頂けるようなものではないので恥ずかしいですが、よろしくお願いいたします。
イタリアではイースターに重なるとえらいことになりますね。私は1度だけ重なってしまい宿探しに苦労したことがあります。でもそのおかげで思いがけずいい宿に泊まることができたのですが。またおじゃましますね。
Commented by travelster at 2010-07-09 22:06
★川越さん
ボクもソレント@イタリアで年末にホテルが見つからなくて苦労しました。
満室ではなくどこもクローズだったのです。
そのエピソード。。。気になります!
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